〇はじめに
皆さんこんにちは。立華高校の砂糖と申します。
今回は、先日(といっても大分前ですが……)に行われたDCS2020の決勝戦について、試合中に何を考えていたのか、ということについて選手目線で少し書いてみようと思います。
というのも、この手の決勝戦について、ジャッジの方々や見学をされていた方々が感想を書くというのはよく見かけるものの、選手目線で試合について語られている文章をあまり見かけないなぁと思い、何かの参考になるかと思い筆を執った次第です。後期DCSなども始まってますし。
試合音声については、De-scoveryのサイトから聞けますので、是非そちらを聞いてから読んでいただければと思います。
〇NC-AQ
僕の担当はAQのみだったので、NC後の準備時間からになります。
NCを聞いた感想としては、オーソドックスな立論を堅実に立ててきたな、という感じでした。この手のNCにおいてQの段階で叩かないと行けないことは事前に決めており、そのまま突っ込んで行きました。具体的な戦略は2つ。
1.) そもそも現状の政策は誰が作っているのか、という確認(固有性では、「政治家が長期的視点を持って政策を推進する」とまでしか言えていない事の確認+官僚という存在のあぶり出し)。
→これは、後に現状の政策形成過程がボロボロ、という反論につなげるため。
2.) プラン後に起こる具体的な実害の確認(スイスの例が、確かに国民は反対したかも知れないが、その結果として何が起こったのか不明確である。との印象づけ)
→これは、後に①国民はちゃんと考えるし、政治家もなんやかんや否決後にしっかり政策を推進する。②実害レベルで言っても、カリフォルニアのように修正が出来ているから問題が無い。という主張へつなげるため。
余談ですが、一応Imp周辺(将来世代の事も考慮すべき云々)も触れておきたいと事前の戦略では考えていたのですが、Affの応答がガッツリ質疑でやりたいことを喋っていた(NQのImp周辺のQA)ので、その分手間が省けました。また、その分AQで固有性とかに割ける時間がふえたので、質疑的には負担が減って良かったです。やったぜ。
〇1NR
1NRの感想は、ダウトレベルでも、エビデンスレベルでもそこそこ重い反論が出てきており、1つでもドロップをしたら普通に負けるなぁというヒヤヒヤ感のあるAttackでした。
特にキツいのが、「安保とかは修正できるのか?」というダウト及び「EUではデマに騙されて後悔している」の2つの反論です。前者については、この反論が通れば重要性の2枚目で主張する、「誰が決定しても同じなのだから国民自身が決定をし、経験を積むという民主的プロセスに委ねるべき」という部分が切られてしまい、DA Attack等もそれに伴い瓦解するという非常に危険な反論です。後者についても、これはDAのストーリーととても相性が良く、「国民自身が後悔する結果を招来するなら、国民自身が政策決定をするべきでは無い」との主張が展開されて、Affとして非常に不利な状況に立たされてしまいます。
このあたりをどう返すか、というところを基準に、反論を考えました。
〇1AR前
1AR前の準備時間なのですが、実は1NR前の準備時間でAttackで読む原稿はほとんど確定させておきました。というのも、今大会が完全オンラインで開催されるということ、また1ARのパートナーが原稿をガッツリ読むスピーチの方が良いパフォーマンスを発揮できることなどから、我々のチームでは1AR/1NRの両原稿を完全にオンライン化させました。
具体的には、Attackの場合は、事前に作っておいたブリーフを試合用Google docsにコピペし、試合に応じて準備時間中に読む順番を変更したり、クレームを変更したりするなどし、またBlockに関しては、主に僕が1NRを原稿上に箇条書きをし、それに応じて読む原稿はブリーフの方からコピペ、個別で対応する必要のある1NRはその場で記入し、スピーチの時はそれを読むだけで良い、という形式にしました。しかし最初の方はあまり上手く運用できず、特に1NRの取り方について非常に悩んでいた(もともとフローで取った1NRを準備時間中に概要を転記する、という形式だったが、明らかに時間が足りず事前の練習試合ではヤバい論点をドロップをしてしまうしスピーチも焦ってしまうしで大惨事に……)のですが、最終的にこのような形に収まりました。ということで、多分今シーズンは1枚も紙を印刷していないハズです。エコですね。
この方法ですが、試合に応じてクレームをいじれるというのがかなりの利点と感じており、ジャッジの反応に合わせて説明/反論を追加する、あるいは省くなど出来たため、個人的にジャッジアダプテーションの点でかなり有用だと思いました。
話がかなりそれましたが、そういう事でAttackはほぼ調整済み、またBlockについては、重い論点に関しては原稿を事前に作成していたのでそれをコピペ+少し説明を追加。他の論点に関してはなるべくワードエコノミーが良くなるように文章を書く、という感じで、選手3人がそれぞれ原稿の担当箇所を書き換えて1AR前の準備時間が終了しました。(僕がブロックの箇条書き部分と文面調整、1AR担当がブロックの詳細な文言記載、2ARがAttackの調整、みたいな感じで分担していました。)
さて、実際のBlockについて、具体的には試合で読んだ内容を見ていただきたいのですが、まず重要性に関してAffの戦略として定めたのは、「実はやり直すこと自体は目的ではないのでは?」というものです。重要性2枚目の井上のエビデンスは、実はあまりやり直しそれ自体が重要とは言及しておらず、あくまで民主的プロセスに委ねるべきだ。すなわち国民自身が結果を踏まえて、次の決定をすること事が重要である(≠法案の修正)。と述べていたため、国民が学習して法案を決定できるならそれ自体がメリットである。修正が出来るならそれはそれでHappy。くらいの気持ちで重要性を伸ばすことにしました。ちなみにこの主張を展開する場合でも、解決性最後のカリフォルニアのエビデンスは使用可能で、ちゃんと過去の結果を踏まえて財政提案を可決しているため普通にCaseが成立すると考えていました。カリフォルニアが強すぎる。
また、EUのデマに関しても、結局どの程度が後悔したのかわからんよね(これはFN規制の知識の援用)、またやらかしたんならやり直せば良いよね(ただしこれは重要性の再反論とあまり整合性が良くない気がしないでも無いが……)。という主張に落ち着かせ、まぁとはいえCaseの発生自体(=国民自身が政策決定が出来るという差分)は切れないよね、程度に残れば大丈夫という認識でした。
〇2AR前
選手目線で見ても1ARがめちゃくちゃ上手くいったのですが、この試合の2NRはそれでもDAを蘇生させ、かつCaseの痛いとこを伸ばされので、2ARでやらかしたら普通に負けるぞ、とおびえながら準備時間を過ごしていました。
さて、準備時間中なのですが、今シーズンで僕がもう片方のサイドで2NRをやっていたというのもあり、2AR前の準備時間は従来よりも少し工夫をしてみることにしました。
ディベートの試合を見ていると、特に第二反駁の前(時々質疑も)で、他の選手がやいやいと言いたいことを言いまくり、第二反駁の選手が半分聞いていないような状況で準備時間が過ぎていく、という事を何度か目撃することがあり、また僕自身がそういう風にしてしまっていたのですが、これはあまり効果的に準備時間を使えていないと感じていました(特にスピーチ中、準備時間で他の選手が言っていた内容が反映されていない事もままあり、何だかなぁと感じることもしばしばあり……)。
そこで、2AR前の準備時間では、2ARの彼にどのような順番でスピーチをし、各争点をどう決着をつけ、最終的にどうまとめるのか、というスピーチの概要をざっくりと言ってもらうことにしました。またその内容に何かしら問題や、付け加えたいことがあれば僕が途中口出しをして、スピーチに加えてもらいました。
こうすることで、①2ARが最終的にどうしたいのかという点を確認出来る。②もう一人の2Rがその内容を確認するというダブルチェック体制が出来る。③加えてスピーカー側も頭の内容が整理できるのでスピーチの精度も上がるのではないか、という3つの狙いがありました(実際僕が2NRでそうしたときはかなり整理出来た感じがあった)。
こうすることで、少なくとも従来のようなチーム内であまり連携が取れていない状況よりかはマシになり、勝ちやすくもなるのではないかなと思っています。
とはいえ、スピーカーによっては周りから話しかけてもらわずに頭の中を整理したいという人もいると思うので、この辺の準備時間の使い方はまぁ人によるよね、という感じに落ち着くかと思います。
さて、肝心の2ARの方針ですが、
①Case自体は生き残っており、国民自身が意思決定を出来ること、また国民がまともな判断を下せることは残った。
②DAの固有性が怪しい。だったら政策の影響が事前に予測できない現在政治家に政策を決めさせるべき優位な理由が無い。
③発生過程は実害レベルで見ても何が起こるか分からないし、起こったとしても修正出来る範疇だ。
→だったら、国民に決めさせた方が良い。
の3本柱です。この手の拮抗した試合では変に2ARで新しいことはせず、自分たちが喋りたい内容をはっきりと喋った方が良いよね、ということで当初の通りの戦略をそのまま推し進める感じにしました(余談ですが、DAフロー上、2NRの議員立法があるという再反論へのニューの指摘は僕が出した物なので、ここでもダブルチェックの効用が一定あったのではないかなと思っています)。
という感じで2ARの調整をし、準備時間を終えました。
〇終わりに
ということで、今回は主に試合中に何を考えていたのか(あと今シーズン取り入れてみた事)という事を軸に記事を書かさせていただきました。オンラインディベート大会もしばらくは続きそうですし、この記事が何かしらの糧になれば幸いです。
最後に、De-scoveryのサイト内にあるブリーフ投稿機能に弊チームの原稿を投稿しましたので、(需要があるかは分かりませんが)何かしらの役に立てばと思います。また、是非この記事を見た選手の方々も各々のブリーフを投稿していただければなと……。そうした方がこのサイトも活気づくと思いますし。待ってま~す。
ブリーフ投稿サイトの使い方:https://de-scovery.com/notice/710