こんにちは!De-scovery編集部です!
本日は10月4日(日)に行われたF LEAGUE 2020開幕戦の観戦記をお届けします!
そもそもF LEAGUEって何?という方は是非以下の記事をご覧いただいた上で本記事もご覧いただければと思います。
ざっくりと概要を説明しますと、様々なメンバーで構成された4チームが5か月間という時間を掛けて日本語の即興ディベートで戦うという、日本語ディベートの世界には今までにはなかった新しい形式の大会と言えると思います。
順位の決定方法も、ジャッジ及びオーディエンスの投票やバロットの得点をポイント化し決定するという斬新なものです!
(流石れんれんPですね…)
来年2月まで今回の試合も含めて20試合が行われるわけですので、途切れることなく毎回観戦記を書いていきたいと思っております笑
試合毎に観戦記を書く中の人も変わるかと思いますので、各ライターの職業・専攻・ディベートへの関わり方といった個性もお楽しみ頂ければと思います!
(因みに今回のライターは国際政治学を専攻している大学生です。ディベートへの関わり方としては中高時代に日本語調査型の選手として活動し、大学以降は偶に選手として活動しつつDCSの運営などを行っています。)
観戦記を書いて下さる方も募集しておりますので、観戦記を書いてみたいという方はお問い合わせページからご連絡を下さい!
前置きが長くなりましたがそれでは観戦記の方に入っていきたいと思います~
試合概要

論題は宇宙開発とかなり難しいものでした。国際政治学を専攻している私としては試合に生かせるか否かは置いておくとして、米中ロといった国々によってある程度開発が進んだ中で現状維持を図るという議論は戦後に行われた核兵器の不拡散を図るという議論と似たものがあるなあという印象を持ちました。
選手が準備を行っている間には解説という形でご参加いただいていた久保さんとMCのれんれんPによる論題や試合で見所の解説が行われていました。その中では、宇宙開発という論題は難しいものであることを前提に、調査型で使っているようなエビデンスが使えない中で適切な事例をチョイスし、人類と宇宙をどう捉えて議論するかがポイントになるだろうというようなお話が出ていました。
ここで今回出場される方の簡単な紹介と担当パートの整理を行っておきたいと思います。
肯定側は立論と第一反駁を大学からディベートを始められた横井さんが担当し、質疑と第二反駁を今年度の大学新人戦優勝を経験されたShoyaさんが担当されました。
否定側は立論と第二反駁を後期のラジオMCであり試合で唯一の高校生であるさとうさんが担当され、質疑と第一反駁を在籍大学はまさかのアメリカの大学だというお話をされていたMoleculeさんが担当されました。
試合展開
それでは試合がどのように進んでいったのかを各パート毎に簡単に振り返っていきたいと思います!
♦肯定側立論
肯定側立論はアカデミックディベートの形式を踏襲し、プランとして衛星の補充などはプランの対象外であることを論じた上で、宇宙ゴミが減少するというメリットを内因性・解決性・重要性という3要素に分解して論じていました。内因性として指数関数的に増加している宇宙ゴミは地球へ落下し人的被害などをもたらし、宇宙空間に存在する衛星などに衝突すると衛星からのデータが得られないという問題を論じ、解決性では落下リスクと衝突リスクが減少すると論じました。最後に重要性では地上へ落下した際の建築物の修理費用や人命への被害は重要であり、衛生との衝突では正しいデータが得られず生活が不便になることは問題であると主張していました。
このような立論に対し解説の久保さんからは、具体的な話にフォーカスし手堅い立論であると評価する一方、問題としている衛星の破損などのリアリティが薄く生活にどのような影響が出ているのかという部分の説明が不足しているとの指摘がありました。
♦否定側質疑
否定側の質疑では主に、プラン前後でデブリによるリスクはどの程度変化するのか、衛星が破損してGPSなどが使えなくことのインパクトという2点に関して質疑が行われました。
久保さんとれんれんPからは否定側が行いたい反駁がイメージ出来る良い質疑であったとのコメントが出ていました。私も肯定側の弱点であるプラン前後の差分と事例などを出せておらずイメージが付きにくいインパクトへの効果的な質疑であったなと感じました。
♦否定側立論
否定側の立論は肯定側立論のようにアカデミックの3要素を踏襲したものではなく、久保さんもおっしゃっていたように即興っぽい立論形式でした。中身としては、人類の発展と人類の危機という2つの論点が提示されました。前者は身近な太陽光パネルを宇宙空間に設置したり、高度なGPSを用いて人の位置情報を精緻化し自動車をより便利にし、また長期的な話として地球に住めなくなった場合に火星探査などで人類が居住できる空間を調査する必要性を論じ、これらのインパクトとして学問の自由を侵害し、未来の芽を摘み取ってはならないとの主張が展開されました。後者では、隕石を撃ち落とす必要性がある場合などには宇宙工学を発展させる必要があると論じ、インパクトとして人類に危害を及ぼしてはならないとの主張を展開しました。
肯定側が現実的な話をしていた一方で、否定側は火星探査など将来的な話をしており両者が対照的で今後の議論が楽しみになってくる展開でした。ただ、立論内の1つ目の論点ではインパクトとして学問の自由を論じていましたが、久保さんや観戦者の方のコメントにもあった通り、それまでの主張に対して適切なインパクトであったかは疑問が残るように感じました。
♦肯定側質疑
肯定側質疑では1つ目の論点に関して宇宙空間への太陽光パネル設置であったり高度なGPSによる自動車の利便性向上が確実なものなのかという点、現在を生きる人々にとって宇宙開発はどのような意義を有するかという点に質疑が行われました。
否定側立論の段階で見えてきた現実的な肯定側と将来的な否定側という対立構造が肯定側質疑というパートを通してより明確化されたように感じました。
♦否定側第一反駁
否定側第一反駁では、宇宙ゴミが問題であることは共通見解であることが確認された上で、質疑でも出てきていたプラン前後の差分という点への反駁が行われ、最後にターンとして宇宙開発を進めた方が宇宙ゴミに関する研究も進めリスクが下がっていくというような議論が展開されました。
否定側の第一反駁は質疑を活かし、立論で示したスタンスに沿う形のターンを提出するという適切な反駁であったように思います。一方で観戦者の方のコメントで天文学でも否定側の主張するデブリへの研究は出来るのはという話が出ていた通り、論題の「開発」とは一何が出来て何が出来ない行為であるのかをもう少し試合内で整理して頂きたいという感想も持ちました。
♦肯定側第一反駁
肯定側第一反駁はまずブロックとして、デブリのリスクに関する差分はデブリが指数関数的に増加するものなので拡大を中止すれば差分はあり、ターンに関しては今後必ず研究成果が出るとは限らないと主張しました。その上でアタックとして、1つ目の論点について否定側の主張は出来るかもという可能性の話でしかなく、インパクトの学問の自由は他者危害原則によって制限されると反駁し、2つ目の論点に関しては移住はかなり先の話であるので地球環境への対応などへ注力すべきと反駁しました。
久保さんのコメントにもありましたが、現実路線という立場が一貫している肯定側ですが、何故現実を重視すべきという点への言及はこの段階でも明確にされておらず、その点に関しては第二反駁での言及を待つことになりました。
あまり議論の大勢に影響は及ぼしませんでしたが、肯定側第一反駁の方が最後に触れていた火星探査などは人類への危害を及ぼすかもしれないという議論は個人的に面白いと感じました。私が観ていた宇宙戦艦ヤマト2199というアニメの中では地球の宇宙軍がガミラスという星に戦争を仕掛け地球が焼け野原になるのですが、地球が宇宙軍など持たなければ植民地化されることはあっても焼け野原にはならなかったのだろうと思います。少し話がずれましたが、否定側の主張は宇宙開発を進めた世界線の良い結果だけに注目していますが、不確実性が高い未来ということは地球に危害をもたらす結果が生じる可能性も否定できないという事は議論にも生かせるのではないかと感じました。
♦否定側第二反駁
否定側第二反駁では、まず冒頭において肯定側は保守的になりすぎであり、論題の主体である人類の将来を考えるべきとの主張がなされました。その上で肯定側のデブリに関する主張は差分が小さいとの主張を行い、否定側の議論には肯定側からダウトしかなされておらず、デブリのリスクの差分が大きくないのであれば否定側のインパクトを踏まえて宇宙開発を進めるべきだと主張しました。
久保さんからは、冒頭での「枕」によってスピーチ全体が綺麗に感じられたとのコメントが出ていました。
♦肯定側第二反駁
肯定側第二反駁では、まず否定側の主張を太陽光パネルや自動車に関しての実現性は不明であり、移住探査などは数億年後という話で現実性が乏しいことを指摘し、プラン前後でデブリによるリスクが変化する以上、確実なリスクの低下が起こる肯定側に投票すべきだと主張していました。
肯定側としては最後まで一貫して現実的な路線で主張していたものの、肯定側の主張するデブリのリスク低下というメリットが現実性は不明確だが人類に貢献しそうな否定側の主張を何故上回るのかに関する説明が乏しかったように感じました。
試合結果

試合結果は上記の画像の通りでした!
概観としてはオーディエンスボートとジャッジ投票で肯定側がかなり上回っていたものの、バロットについてはそれほど差がつかないというものでした。
ここでジャッジの方の講評も簡単ではありますが、振り返っておこうと思います!
ジャッジの方からは試合の評価に入る前に、「かもしれない」という可能性に関する議論がかなり多かった今回の試合を踏まえての今後へのアドバイスとして、アナロジーの重要性と広範な視点という2点のお話がありました。前者に関しては、調査型ディベートにおいてはエビデンスを用いて行っている推論(海外で○○という政策を導入したら××という結果が出たので日本でもそうだろう)と同様の推論を即興型でも事例を用いて行っていくというお話でした。後者に関しては、例えば今回の試合であれば進歩史観に疑問を呈するような議論を通じて人類の在り方などにも触れられると良いというお話でした。
さて、投票先に関しては画像の通り、否定側でした。理由としては、肯定側のメリットは一定程度評価するがどの程度解決するかは主観に委ねらる一方、否定側の議論は実現性が不明確とは言え自動車の話など実現できそうな話もしていて否定側の宇宙開発でよりよい社会に向かうというストーリーが取れるため否定側というようなものでした。
ジャッジの方の講評を待つ時間、及び講評後には選手・解説者・ジャッジによる感想戦という試みも行われていました!
その中で印象的であったのは、大会独自バロット項目であるユーモアの難しさについてのお話でした。オンラインでの大会ということで観戦者の方の反応が見えない中でユーモアのあるスピーチをするのはかなり勇気がいるようです笑
おわりに
観戦記なるものを書くのは初めてだったのですが、いかがだったでしょうか?
あまり上手く書けた自信はないのですが、少しでも多くの皆様がF LEAGUE 2020へ興味を持っていただければ嬉しい限りです。
次回の試合は10月11日(日)の19:30(試合自体は20:00)から開始の予定です!是非観戦してみてください!ディベートに少しでも関心がある方であれば、どなたでも楽しめる大会だと思いますよ!
それではまたいつかお会いしましょう~